Melatonin levels and embryo quality in IVF patients with diminished ovarian reserve: a comparative study Reprod Biol. Endocrinol. 2024 Oct 16;22:127. doi: 10.1186/s12958-024-01296-6
卵巣予備能低下(DOR)の患者におけるメラトニン濃度と、胚の質への影響を解析した論文です。正常な卵巣予備能(NOR:血中1.1ng/ml以上、胞状卵胞数(AFC)10以上、男性因子による生殖補助医療が必要)群、DORの定義を血中AMH<1.1ng/ml、AFC<6とし、年齢35歳以下を病的な DOR (DOR-Path) 群、年齢40歳以上を生理的な DOR (DOR-Phy) 群として比較しています。
DOR群はNOR群と比較してメラトニン濃度が低く、IVF成績も劣っていました。また、血清および卵胞液中のメラトニン濃度と、卵巣予備能および胚発生のパラメーターとの間に有意な相関関係が発見されました。よって、DOR患者のメラトニン濃度は胚の質に影響を与える可能性があることが示唆されました。
(a-e)体外受精の成績と血清中のメラトニン濃度との相関、(f-j)体外受精の成績とhCG日の血清中のメラトニン濃度との相関、(k-o)体外受精の成績と卵胞液中のメラトニン濃度との相関。
背景
メラトニンは様々な体液や細胞に含まれるホルモンであり、強力な抗酸化作用、抗アポトーシス作用、内分泌調節作用があることが知られている。本研究の目的は、DOR患者におけるメラトニン濃度と胚の質への影響を解析することである。
方法
NOR(n=27)、DOR-Path(n=25)、DOR-Phy(n=33)を含む、体外受精または顕微授精の治療を受けた女性85名を登録した。ELISAを用いて患者の血清および卵胞液中メラトニン濃度を評価し、メラトニン濃度と胚の質との相関を調べた。
結果
DOR-Path群とDOR-Phy群の卵胞液中および血清中のメラトニン濃度は、NOR群と比較して低かった(P<0.05)。しかし、DOR-Path群とDOR-Phy群の間にメラトニン濃度の有意差は認められなかった(P>0.05)。さらに、NOR群の卵胞液中のメラトニン濃度は血清中よりも有意に高かった(P<0.001)。最後に、血清および卵胞液中のメラトニン濃度と、卵巣予備能および胚発生のパラメーターとの間に有意な相関関係が発見された(P<0.05)。
結論
DOR患者のメラトニン濃度は胚の質に影響を与える可能性があり、DORの潜在的な病態に関する洞察と、これらの患者の治療成績を向上させる機会を提供する。
コメント
本研究では、血清および卵胞液中のメラトニン濃度が、卵巣予備能、卵子数、胚の質と相関があることが示され、卵巣予備能と体外受精の転帰を予測するマーカーとなる可能性が示唆されました。
また、採卵周期のメラトニンの経口摂取により、質の良い卵子を作る効果が期待されており、さらに、培養液へのメラトニンの添加が、胚の質を向上させるというデータも報告されています。本研究でも血中および卵胞液中のメラトニン濃度が高いほど体外受精の成績、特に培養3日目の胚の質が良好であるというデータを示しています。
一方で、着床率や妊娠率のデータが不足しており、今後はより大規模な研究が必要であると思われます。