Pterostilbene enhances reproductive outcomes and oocyte quality in aged mice without adverse effects Aging (Albany NY) 2025 Jul 23;17(7):1762-1783. doi: 10.18632/aging.206287. Epub 2025 Jul 23.
加齢により卵巣機能が低下したマウスを対象に、植物性ポリフェノール「プテロスチルベン」の経口投与効果を検証したものです。その結果、プテロスチルベンを摂取した高齢マウスは、体外受精-胚移植の成績が若齢マウスと同等に回復したと報告しています。また、それらの効果は卵子内のミトコンドリア活性増加が関与している可能性を示しました。この成果は、Aging不妊に対する新たな補助治療として期待されています。

b)平均排卵数:PTSを22週間摂取した群で非摂取群に比べて有意に増加した。
c)平均妊娠率:PTSを摂取した3群全てで非摂取群に比べて有意に上昇した。
d)平均産仔獲得率:PTSを22週間摂取した群で非摂取群に比べて有意に増加した。
Young control:6週齢
Abstract
背景:
老化は卵母細胞の質の低下を引き起こし、妊娠および出産の成功率を低下させる。近年の研究では、卵母細胞の質を改善するための栄養補助食品に注目が集まっており、特に天然ポリフェノールであるレスベラトロールなどが注目されている。
プテロスチルベンはレスベラトロールのジメトキシ化アナログであり、より高い生理活性を示すことが報告されている。
目的:
加齢に伴う卵巣機能低下を示すマウスにプテロスチルベンを摂取させた際に、生殖成績、特に卵子の質が改善されるかどうかを評価することを目的とした。
方法:
ICR雌マウスを25週例から47週齢まで飼育し、プテロスチルベンを経口摂取させた。摂取期間で4群(0, 1, 6, 22週間)に分けて、摂取後の体外受精-胚移植成績、排卵卵子のミトコンドリア評価、副作用発生の有無などを比較検討した。
結果:
プテロスチルベンを摂取した高齢マウスでは、体外受精-胚移植による着床率や産仔獲得率が有意に向上し、卵子の質が若齢マウスと同等のレベルまで回復した可能性を示した。また、プテロスチルベンの摂取は発情周期や体重に影響を与えず、産まれた子の健康や生殖能力にも異常が認められなかった。細胞レベルでは、プテロスチルベン処理により卵母細胞のミトコンドリア膜電位とATP量が改善されたが、ミトコンドリアDNAコピー数に変化はなかった。
更に、レスベラトロールとは異なり、プテロスチルベンは子宮内膜間質細胞の脱落膜化を阻害しなかった。
考察:
プテロスチルベンは高齢マウスの卵母細胞の質を効果的に回復させ、中年マウスの加齢に伴う卵母細胞劣化を副作用なく予防することを示唆した。
コメント
この研究は、プテロスチルベンが加齢に伴い低下した卵母細胞の質を回復もしくは、質の低下を予防することを示しています。短期投与では着床率が有意に改善され、長期投与では排卵数・着床率・出生率の向上および流産率の低下が認められました。
卵母細胞のミトコンドリア機能(膜電位・ATP量)改善効果も確認されており、体重や発情周期、仔の健康・生殖能力にも悪影響がなかった事が示されました。
現在、高齢女性の卵質改善に有効な治療法はなく、プテロスチルベンはその新しい選択肢として臨床応用が期待されます。