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ニコチンアミドモノヌクレオチドは、ミトコンドリア機能を高め、染色体ラギングを減少させることによって、ウシ卵母細胞の発育を促進する

Nicotinamide mononucleotide boosts the development of bovine oocyte by enhancing mitochondrial function and reducing chromosome lagging. Sci Rep 2025 Jan 2;15(1):310. doi: 10.1038/s41598-024-81393-z.

ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)添加培養液を用いたウシ卵子の対外成熟において、NMNは卵母細胞内のNAD+濃度を増加させてミトコンドリア機能を改善し、ATP産生を高め、活性酸素の量を減少させることが明らかになりました。これにより染色体ラギングなど分配エラーが減少し、卵母細胞の質や胚盤胞形成率が向上することが報告されています。加齢や体外培養に伴うエネルギー代謝の低下を補う作用もあり、あらためてNMNは生殖補助医療や家畜生産で卵子の発育能改善に有望であると論じています。

NMN添加により、卵母細胞のミトコンドリア機能が活性化され、ATP産生が増加するとともに、細胞内活性酸素種が減少する。また、染色体ラギングなどの異常分配リスクも低減する。これらの改善により、体外受精後の胚盤胞形成率が高まり、発生能が向上することが示唆される。

 

Abstract

背景

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD(H))およびその代謝物は、生理的プロセスの重要な制御因子であり、細胞が栄養不足や遺伝毒性、概日リズムの乱れ、感染、炎症、外因性物質などの環境変化に適応するために必須である。近年、NAD(H)の細胞内レベルが生殖細胞の質や発生能に関与する可能性が示唆されている。

目的

本研究では、卵母細胞におけるNAD(H)レベルの上昇が、体外受精(IVF)後の卵母細胞の質および発生能を改善するかを検討することを目的とした。

方法

ウシ卵丘細胞‐卵母細胞複合体(COCs)を用い、培養液にNAD(H)の前駆体であるNMN(0–100 μM)を添加して成熟培養を行った。

細胞内NAD(H)およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)の定量、IVF後の胚盤胞形成率、ミトコンドリア機能関連遺伝子の発現解析、蛍光プローブによるミトコンドリア機能評価、ATP量、活性酸素種(ROS)量、染色体分配異常の指標を解析した。

結果

NMN添加によって卵母細胞内NAD(H)およびNADPレベルが上昇し、IVF後の胚盤胞到達率が向上した。

加えて、ミトコンドリア機能関連遺伝子の発現が変化し、MitoTracker Orange/ノニルアクリジンオレンジ比およびATP量は増加、ROSレベルは低下した。

また、NMNは後期における染色体ラギングを減少させた。

考察

NMN処理によるNAD(H)レベルの増加は、卵母細胞のミトコンドリア機能を改善し、酸化ストレスの低減や染色体分配の安定化をもたらすことで、受精後の発生能を高める可能性が示唆された。

本研究は、NAD(H)代謝が卵母細胞の質と発生適性を制御する重要な要素であることを示し、生殖医療や家畜繁殖に応用できる可能性を持つ。

コメント

本論文は、ウシ卵母細胞の体外発生能向上に対するNMNの有効性と塩のメカニズムの一端を明らかにした研究です。細胞内環境と染色体分配の双方に良好な影響を及ぼす事を示した点に新規性があります。

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