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腸内細菌叢の食事指標と女性不妊症との関連: リンパ球数と赤血球葉酸の介在効果

Association between the dietary index for gut microbiota and female infertility: The mediation effects of lymphocyte count and red blood cell folate J Reprod Immunol 2024;163:103543. doi:10.1016/j.jri.2024.103543

米国のNHANESデータを用いた解析により、腸内細菌叢に配慮した食事指数(DI-GM)のスコアが高い女性は不妊リスクが有意に低いことが示され、この関連においてリンパ球数と赤血球葉酸濃度が媒介効果を持つ可能性が示されました。

Abstract

これまでの研究で、腸内細菌叢の構成変化と女性不妊との関係が明らかにされていますが、腸内細菌叢のための食事指標(DI-GM)と女性不妊との関連はこれまで検討されていませんでした。

本研究では、2013年から2018年のNHANESデータを用い、食事調査データからDI-GMを算出し、その関連性を解析しました。さらに、リンパ球数(LC)と赤血球葉酸(RBC葉酸)がDI-GMによる女性不妊リスクにどのように媒介効果を持つかを調べるため、メディエーション分析も行いました。

1555名のうち311名が女性不妊と診断されており、共変量を調整した重回帰分析では、DI-GMスコアが高いほど女性不妊リスクが低いという負の関連(OR: 0.80, 95%CI: 0.74-0.88)が認められました。DI-GMスコアを四分位で分けると、Q3およびQ4群はQ1群に比べて女性不妊との負の関連が有意でした。また、制限付き三次スプラインロジスティック解析により、DI-GMスコアと女性不妊の有病率には非線形の関連が示されました。

媒介分析の結果、LCとRBC葉酸がそれぞれ4.64%、7.08%の割合でDI-GMスコアと女性不妊リスクの関連を媒介していることが明らかになりました。本研究は、DI-GMスコアが女性不妊リスクと負の関連を持ち、その関連にはLCとRBC葉酸が有意に関与していることを示しています。

ORはオッズ比。CIは信頼区間。Crude modelは共変量を調整せず。Adjusted modelは年齢、配偶者の有無、BMI、喫煙の有無、糖尿病の既往歴、高血圧の既往歴、骨盤内炎症性疾患で調整。DI-GMは腸内細菌叢の食事指標。各四分位の中央値を含む変数に基づく傾向の検定。DI-GMは0~13の範囲(腸内細菌叢に有益なもの[0~9の範囲]と腸内細菌叢に好ましくないもの[0~4の範囲]を含む)で、0~3、4、5、≧6でグループ分けされている。

尚、DI-GMの算出方法は以下の通りです。
合計14の食品または栄養素が構成成分として特定されています。具体的には、アボカド、コーヒー、緑茶、クランベリー、発酵乳製品、ブロッコリー、ひよこ豆、食物繊維、大豆、全粒穀物が腸内細菌に有益な成分、その一方、加工肉、精製穀物、赤肉、高脂肪食(脂肪から得られるエネルギーが40%以上)は有害な成分としています。

食事調査(本研究では24時間思い出し法)で腸内細菌に有益な成分の摂取量が性別ごとの中央値以上であればスコア1が付与され、有害な成分については、摂取量が性別ごとの中央値または高脂肪食の場合は40%以上であればスコア0が付与され、それ以外の場合はスコア1が付与され、その合計をDI-GMとして算出します。本研究の24時間思い出し法では緑茶が含まれていないため、スコアは0から13になります。

コメント

この研究は、腸内細菌叢に基づく食事指数(DI-GM)が女性の不妊と関連することを、NHANESデータを用いて示しました。特に、免疫(リンパ球数)と栄養状態(赤血球葉酸)を介した媒介効果の検討により、腸内環境と生殖機能の間接的な関係に新たな視点を加えています。一方、横断的研究であるため因果関係の確定には限界があり、今後前向き研究での検証が望まれます。

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